【目的】鰹節には鰹を焙乾した荒節と荒節の表面を削りカビ付けした枯節がある。これまでにも鰹だしの抗酸化能に関して報告されているが、荒節だしと枯節だしの抗酸化能を比較した報告はOHラジカルを用いた研究だけである。本研究ではDPPH ラジカルを用いて荒節だしと枯節だしの抗酸化能の比較を行い、興味深い結果を得たので報告する。
【方法】かつお節は焼津産の荒節(10番火)、枯節(4番カビ)を用いた。鰹だしはそれぞれの節1kgをミキサーで粉砕し、温度、時間を変化させ一定濃度で抽出し調製した。DPPHラジカル消去活性は比色法を用いて測定し、Trolox等量として換算した。さらに、荒節だし、枯節だしをPorapak Qカラムを用いて吸着画分、非吸着画分に分画し、それぞれの画分について消去活性の比較を行った。
【結果】抽出実験の結果、全ての抽出条件において荒節だしは枯節だしよりも高いDPPHラジカル消去活性を示し、OHラジカルを用いた報告とは異なる結果を得た。また、荒節だし、枯節だし共に、もっともラジカル消去活性が高くなる抽出条件は100℃30分の抽出であった。さらに鰹だしをPorapak Qにて分画した結果、荒節だしでは吸着画分と非吸着画分で同等のラジカル消去活性を示したが、枯節だしでは吸着画分が非吸着画分より低いラジカル消去活性を示した。しかしながら非吸着画分においては荒節だしと枯節だしの間に差は見られなかったことから荒節だしと枯節だしのDPPHラジカル消去活性は、吸着画分の差によることが推定された。