【目的】我々は、鮭の加工残渣を利用した市販品の魚醤油の抗酸化能を調べた結果を既に報告しているが1)、今回は、鮭の加工残渣を部位別に分け、それぞれの部位別の残渣を用いて魚醤油の手作りを行った。その時の抗酸化能、すなわち、ペルオキシラジカル捕捉活性能を調べたので、その結果を報告する。
【方法】試料は、鮭の加工残渣として、肝臓、心臓、めふん(腎臓に相当する)、白子、腸、頭を用い、市販品の鮭の魚醤油や他の市販品の魚醤油と比較した。抗酸化能は、ラジカル捕捉活性能を指標とし、特に、油の自動酸化を引き起こすペルオキシラジカルに注目した。ペルオキシラジカル捕捉活性能は、40 mMの2,2’-アゾビス(2-アビジノプロパン)二塩酸塩(通称AAPH)から発生するペルオキシラジカルに、手作り魚醤油を働かせ、ラジカルの抑制を、アルカリ条件下のルミノール化学発光(ケミルミネッセンス)系で調べた。使用した装置は新型超高速シングルフォトンカウンターを搭載したベルトールド社製Mithras LB940マルチラベルプレートリーダーであった。発生したラジカルを半分捕捉する魚醤油の濃度をIC50値と定義し、IC50値で結果の比較を行った。
【結果】市販品の「しょっつる」でIC50値は0.12%、市販品の鮭の魚醤油で0.029%であった。一方、鮭の加工残渣で手作りした魚醤油は、0.011から0.028%と高い抗酸化能を示した。特に、鮭「肝臓」魚醤油では、約1万倍に薄めて使用しても発生するラジカルの半分を捕捉する事が判明した。
1)河原豪, 成田亜矢, 大滝明弘, 山内富夫, 原田和樹, 魚谷益三, 小泉武夫: 発酵食品として鮭で作った魚醤油の抗酸化能. 日本食生活学会第29回大会(福岡), 2004年.