日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1D-a6
会議情報

口頭発表
魚の保蔵時における脂質酸化と酸化促進成分
*山本 由喜子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】魚は多価不飽和脂肪酸のよい供給源であるが、脂質酸化を受けやすいためその保蔵には注意が必要である。特にイワシ等のいわゆる青魚は脂質酸化を受けやすいことが知られているが、その酸化促進にかかわる成分については十分解明されているとはいえない。本研究では、数種類の魚について保蔵時における脂質酸化の程度を測定し、それらの成分中、脂質と鉄について、酸化促進効果との関連を検討した。
【方法】青魚であるイワシ、サンマと白身魚であるカレイの、各可食部をすり身状にして冷蔵保存した。酸化の程度はロダン鉄法とTBA法により過酸化脂質量を測定して示した。酸化促進に関与する成分として、総脂質含量、脂肪酸組成、ヘム鉄と非ヘム鉄含量を測定した。また、各魚の脂質をFolch法で抽出して、魚油の冷蔵保存時についても脂質酸化の程度を測定した。さらに、100℃、170℃で加熱後についても酸化の程度を測定した。
【結果】3種類の魚の冷蔵時にはイワシが最も酸化を受けやすく、1日目でPOV, TBAが上昇した。次いでサンマ、カレイの順であった。魚油の冷蔵時における酸化速度は3種類とも魚肉全体よりも著しく遅く、5日目まで安定であった。その後、魚油の酸化が進行したが、その酸化速度はイワシ油が最も速く、次いでサンマ、カレイの順であった。総脂質含量、鉄含量(ヘム鉄、非ヘム鉄)、いずれもイワシ、サンマで多く、カレイは少なかった。多価不飽和脂肪酸の割合の差異は小さかった。また、イワシは加熱により非ヘム鉄が顕著に増加し、その後の冷凍保存では生よりも速く酸化が進行した。これらのことより、非ヘム鉄含量は、魚類の保蔵時における脂質酸化の亢進に大きく関与するものと考えられた。

著者関連情報
© 2006日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top