日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1D-a8
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口頭発表
さばなれずしの製造工程中における成分変化と微生物相
*久保 加織松井 理恵堀越 昌子糸賀 千佳磯部 由香
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抄録

【目的】さばなれずしは塩漬けした魚を飯とともに数ヶ月以上漬けることにより製造されるが、飯漬け1ヶ月後にpHや核酸関連物質に劇的な変化が起こり、なれずしに特徴的な揮発成分が出現することをこれまでに明らかにしてきた。本研究では、飯漬け1ヶ月以内の成分変化と乳酸菌の同定を行い、なれずし製造中における変化をさらに詳細に解析した。
【方法】水分、灰分、脂質の含量、塩分濃度、pHは常法どおり、脂肪酸組成はGCにより、核酸関連物質はHPLCにより分析した。揮発成分はSPMEにより捕集し、直ちにGCMSで分析すると共に、GC-Oにより香りの分析を行った。微生物相については、適宜希釈したなれずしをMRS培地にて平板培養し、乳酸菌数を測定するとともに、外観が異なるコロニーを選択して純粋分離培養し、分子生物学的手法を用いて属・種の推定を行った。
【結果】さばなれずしの脂肪酸組成は1年後も原料の塩さばとほぼ同じであった。IMPは飯漬け1週間で最高値に達した後、1ヶ月以内にほとんどが消失し、ヒポキサンチンやキサンチン含量の最大値は1ヶ月後にみられた。pHは飯漬け1ヶ月の間に5.7から4.3に徐々に低下し、その後は一定であった。揮発成分は、飯漬け1週間で大きく変化し、なれずしに特徴的な揮発成分が出現した。その後、多種類の揮発成分が微量に出現し、その中には香りを強く感じる物質が含まれていた。乳酸菌数は飯漬け1週間後で7.9×107個/gであったが、その後増加し、6ヵ月後に1.4×108個/gに達した後徐々に減少し、1年後には3.0×105個/gとなった。どの期間においてもEnterococcus faeciumが分離・同定され、発酵に関わっていると考えられた。

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