日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1E-a1
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口頭発表
加熱調理が小麦アレルゲンに及ぼす影響について 
*比江森 美樹増田 和子木本 眞順美山下 広美辻 英明
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キーワード: 小麦, アレルゲン, 加熱調理
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抄録

[目的] 小麦は様々な加工性に優れており多くの食品に利用されているが、代表的なアレルギー食品の一つとしても知られている。従来、小麦そのもののアレルゲン性に関する研究は活発に行なわれてきた。しかし、小麦利用食品は摂取に際して加熱操作を通して調理されるが、その加熱調理やその形態が小麦のアレルゲンに与える影響やその挙動については知られていない。そこで、我々が既に見い出した小麦の水溶性画分におけるアレルゲン、Tri a Bd 27KとTri a Bd 17Kの両アレルゲンを指標にして、各種調理操作や調理形態が小麦アレルゲンに及ぼす影響について検討した。
[方法] 小麦粉から作製したドウとバッターの二種類の生地を「ゆで」、「蒸し」、「揚げ」、さらに「オーブン」、「電子レンジ」および「オートクレーブ」による各調理を行い、それら試料よりタンパク質を抽出した。次いで、Tri a Bd 27KおよびTri a Bd 17Kに対するモノクローナル抗体および小麦アレルギー患者血清を用いたイムノブロットにより、加熱調理によるアレルゲン分子の挙動を検討した。さらに、小麦加工食品を作製する際に使用される牛乳、卵、バター、食塩などの副材料が共存した際の影響についても併せて検討した。
[結果] ほとんどの調理操作に共通して、小麦アレルゲンTri a Bd 27Kは分解されやすいがTri a Bd 17Kは新たにアレルゲン性を保持した複数の重合体を形成することが示された。しかしながら、「オートクレーブ」による加熱操作では、アレルゲン分子をはじめとする総タンパク質の低分子化が観察され、その現象は副材料の添加によって顕著であった。なお、形態による違いは観察されなかった。以上の結果から、加熱調理は調理条件により、小麦のアレルゲン分子に重合化や分解などの影響を及ぼすことが明かになった。

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