日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1E-a2
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口頭発表
醤油の新しい機能性:鉄吸収促進効果
*永谷 裕子真岸 範浩徳力 望古林 万木夫中田 佳幸築山 良一今井 宏美鈴木 誠辻 啓介
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抄録

【目的】これまでに我々は、醤油に含まれる機能性成分SPS(しょうゆ多糖類, Shoyu polysaccharides)に注目し、様々な機能性評価を行なってきた。その一つとして、SPSの抗アレルギー活性を見いだし、スギ花粉症、および通年性アレルギーを対象とした臨床試験によりSPSのアレルギー症状低減効果を実証した。ここでは、SPSの新しい機能性として鉄吸収促進効果を解明した。
【方法】In vitro試験として、平衡透析法によりSPSの鉄キレート能を測定した。In vivo試験として、3週齢の雄性ラットを鉄欠乏試料で2週間飼育することにより貧血状態を誘導した。その後、貧血ラットに鉄剤とSPSを2週間投与して、臓器重量、血液成分の分析等を行なった。さらに、健常な女性被験者を対象にしてSPS群とプラセボ群を二群とする二重盲検試験(n=45)を1ヶ月実施した。本試験は、倫理委員会を設置し、その承認の下、試験実施計画書ならびにヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施したものである。
【結果】通常、pH中性域では鉄の沈殿が生じるが、SPSを鉄と共存させることにより、鉄の沈殿を防ぎ溶解性を安定させることがわかった。平衡透析法により鉄キレート能を測定したところ、SPSはpH中性域において鉄イオンをキレートすることが示唆された。貧血ラットを用いた試験では、鉄剤の単独投与に比べて鉄剤とSPSを併用投与することにより肝臓中への鉄の貯蔵が有意に高まることが確認できた。臨床試験では、SPS群の血清鉄はプラセボ群より有意に増加していた。以上の結果から、醤油に含まれるSPSの新しい機能性として鉄吸収促進機能が明らかとなった。なお、本研究の一部は、平成17年度民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業 (農林水産省)の技術開発課題として実施したものである。

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