日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 2A-p1
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口頭発表
アンケートによる抽象的な風味表現の尺度化
*早川 文代中井 仁美日下部 裕子進藤 洋一郎
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抄録

【目的】食べ物の風味を表現する“こく”“深み”などはおいしさと密接な関係があることが多く、官能評価において重要な特性描写用語として使用されることがある。しかし、抽象的で曖昧なため定義づけやパネルの訓練が困難である。そこで、いくつかの抽象的な風味表現をアンケートにより尺度化することを試みた。
【方法】まず、プロの料理人26人を対象とした面接調査を行った。おいしさに関係する抽象的な風味表現として、“こく”“深み”“厚み”“広がり”“奥行き”“豊か”の6語を選定し、これらを尺度化するために用いる食物64品目および形容語句40語を収集した。次に、調理科学研究者、栄養士、料理研究家合計29人を対象としてアンケートを実施した。調査票に食物64品目および形容語句40語をそれぞれランダムに挙げ、各抽象的風味表現との関係の強さを4カテゴリ(関係ない/やや関係がある/関係がある/とても関係がある)で回答させた。データ解析にはコレスポンデンス分析を適用した。
【結果】得られた数量を第1軸と第2軸を用いて布置したところ、2次曲線を描いたことから、1次元尺度の構築が可能であることが示された。そこで、第1数量を用いて尺度化したところ、いずれの用語もスープ類、カレー、チーズなど動物性食品を長時間加熱または熟成した食物と関係が強かった。また、“深み”は酒類や茶類、“豊か”は植物性の素材との関係が特徴的であった。さらに、“こく”は「重厚感」「持続性」、“厚み”は「うま味」「バランス」、“広がり”は「心地よい」と関係が強いなど、各用語の特徴を示すことができた。用語間の関係を調べたところ、“こく”と“厚み”、“広がり”と“奥行き”は類似性が強いことが示された。

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