日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 2B-p1
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口頭発表
有機農法が米飯食味に与える影響
*新井 映子田口 沙和子
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抄録

目的 近年,消費者の食への安全志向が高まる中,有機米の生産は増加傾向にある。しかし,有機米が広く消費者に受け入れられるためには,食味の良さも兼ね備えていることが重要である。そこで,本研究では原料が異なる肥料を用いた有機米の特性を,化成肥料を用いた慣行米と比較することにより,有機農法が米飯食味に与える影響を検討した。
方法 供試米には,静岡大学の実験圃場において,3種類の有機農法(籾殻堆肥,牛糞堆肥,レンゲ)と慣行法で栽培されたひとめぼれを使用した。一般成分,アミロース量,RVA測定値,加水分解酵素活性から,有機米と慣行米の米粒特性を比較した。カラーインデックス,テクスチャー,遊離糖量,グルタミン酸量,官能検査から,有機米と慣行米の米飯特性を比較した。
結果 有機米は,慣行米よりもたんぱく質含有量が低く,RVA測定値の最高粘度とブレークダウンが大きかった。そのため,有機米米飯は,慣行米米飯よりも軟らかく,粘りが強かった。有機米米飯は,慣行米米飯よりも遊離糖量が多く,炊飯過程で内在性アミラーゼの作用を受けやすいことが推察された。官能検査の結果より,レンゲの有機米米飯は慣行米米飯よりも総合評価が高く,嗜好性において優れていた。牛糞堆肥の有機米米飯は,軟らかさや旨味の評価が高いにもかかわらず,香りが慣行米米飯よりも悪いと評価され,総合評価に有意な差は認められなかった。籾殻堆肥の有機米米飯は,すべての特性において慣行米米飯との間に有意な差は認められなかった。以上の結果より,本研究で検討した有機農法の中では,レンゲが米飯食味に好ましい影響を与えることが判明した。

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© 2006日本調理科学会
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