抄録
【目的】近年の健康志向と美食志向に伴い、食材の持つ機能性を活かしつつ、そのうま味や食感を十分に引き出す新しい調理方法の開発が試みられている。本研究では、電子レンジにスチーム機能を搭載したスチームオーブンレンジを用いて、スチームレンジ加熱が野菜の機能性および嗜好性に及ぼす影響を検討した。
【方法】ブロッコリーを試料とし、加熱にはM社製の家庭用スチームオーブンレンジを一部実験用に改造して使用した。調理条件は、700W電子レンジ機能のみで加熱(ラップあり、ラップなし)、電子レンジ機能にスチーム機能を併用して加熱(スチーム発生条件A、スチーム発生条件B)とした。さらに、電子レンジ加熱前にスチームを2分または5分当てたものを調理した。対照として、ゆで加熱を行った。機能性の評価として、DPPHラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量を測定した。嗜好性については、色、硬さ、水っぽさ、甘さ、総合評価としてのおいしさに注目して官能検査を行った。
【結果】ブロッコリーのラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量は、ゆで加熱の場合には加熱時間が長くなるほど減少した。しかし、電子レンジ加熱の場合には、ラップありおよびラップなしともに増加傾向がみられた。スチーム発生条件Aおよびスチーム発生条件Bの場合、ラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量はラップなしでの電子レンジ加熱と同等の値を示した。電子レンジ加熱前に5分間スチームを当てた場合には、ラジカル捕捉活性とアスコルビン酸量が少し減少した。官能検査では、スチーム発生条件Aが最も色鮮やかで甘みの強いことが明らかとなった。