抄録
【目的】
食生活によって引き起こされる可能性のある疾病予防のためにタイ政府によるタイ人のための食事指針が制定されている。タイ北部山岳地帯には独自の文化と伝統をもつカレン族、モン族、リス族等の山岳民族が居住している。タイ政府はこれら山岳民族にケシ栽培の代替としての収入源、生活手段確保となる野菜や果実の栽培等を指導、奨励している。北部タイは中国雲南省から東北タイ、シャン高原に広がるもち米文化圏に属するが、うるち米で作った麺も簡易食として食べている。そこで、モン族の食生活および地域の小学校における栄養教育について調べた。
【方法】
チェンライ県ノンホイカオ村の住民を対象に食品摂取頻度調査を実施するとともに、村の小学校5年生の調理実習および給食作りを見聞した。村の人口、約800人のうちモン族は約90%を占める。
【結果】
摂取頻度の高かった食品は米、野菜類、卵で、逆に低かった食品はパン、イモ類、果実類、牛乳であった。肉類は小学生よりも家族に、牛乳は小学生のほうに摂取頻度が有意に高かった。食べ物や栄養等の学習後、そのまとめと試験をかねて調理実習を実施するとのことであった。校庭の隅で、木材を燃料に4グループに分かれて、各グループで役割分担を決め、一食分の食事作りをし、食品の扱い方、調理操作、献立等のチェックを教員が行う。調理員が作る給食は煮汁の多い料理が一種類で、主食の飯は各自家庭から持参する。小学生の約半数が肉類の摂取頻度を「1回以下/週」と回答したことから給食によって肉類が摂取できていると推測された。