抄録
【目的】
一般に、パンは軟らかい物性を示すが、咀嚼に要する筋活動量は飯よりも高い値を示し、食べづらいのが現状である。一方、粥にした場合、米飯に比べ、牛乳の使用により栄養価も上がり、軟飯,粥に比べて粘着性が少なく、手軽に均一に作れるなどの長所もある。今回は、市販の食パンのテクスチャー特性を調べるとともに、人工唾液の存在がテクスチャーに及ぼす影響についても検討を行った。さらに調製したパン粥のレオロジー特性について検討を行った。
【方法】
湯捏製法で作られた市販食パン2種類と、その他の製法で作られた市販食パン2種類を試料とした。パンの中心部を用い、破断特性(破断応力、破断歪率)およびテクスチャー特性(かたさ、凝集性、付着性など)をクリープメータ(山電:RE2-3305S)で測定するとともに、人工唾液(帝人:サリベート)に試料を浸してテクスチャー特性を測定した。パン粥は市販パン2種にパン重量の4倍の市販牛乳を加え、最初の重量の約91±0.5%に加熱し調製した。パン粥は、直径40mm、高さ15mmのステンレス製のカップに詰め、テクスチャー特性、クリープ特性を測定した。
【結果】
湯捏製法による食パンの破断応力および破断歪率は大きい傾向にあり、噛みきりにくいことが明らかとなった。食パンのテクスチャー解析の結果、付着性は人工唾液が加わると有意に大きくなり、凝集性は有意に小さくなった。湯捏製法のパンではかたさ応力、ガム性応力はその他製法のパンより大きくなった。パン粥の物性は、20-30度では、温度の影響を受けやすく、クリープ解析の結果、弾性率EO、粘性率ηNは温度依存性が高いことが明らかとなった。