日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成20年度日本調理科学会大会
セッションID: 2D-11
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口頭発表
イタリアンメレンゲの調製過程におけるSalmonella Enteritidisの挙動
*木庭 朋子和田 磨希子兒嶋 高志長谷川 峯夫
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抄録


【目的】
 サルモネラ属食中毒は、日本で発生件数が多いもののひとつである。特に鶏卵由来とみられるSalmonella Enteritidis(以下SE)によるものが近年問題となっており、卵を使用した生菓子も原因としてよく挙げられる。一方、ムースなどの使用生地としてイタリアンメレンゲがある。これは、卵白に115~121℃の高温のシロップを加えながら泡立てたものである。高温のシロップを加える作業の目的は大きく2点ある。1点目はつやがあってしっかりした泡にする品位形成、2点目はシロップの熱による殺菌である。2点目の効果により、生食しても安全と考えられてきたが、殺菌効果に対する十分な検証が行われていない状況である。本研究では、イタリアンメレンゲの調製過程におけるSEの挙動を明らかにすることとした。
【方法】
 試料は5コートミキサーを用いて、一般的なイタリアンメレンゲの配合(卵白:砂糖=1:2)で調製し、2つの試験により検証した。[A]メレンゲの温度変化測定:シロップ投入後攪拌中の温度をデータコレクタにて測定した。[B]サルモネラ消長試験:未殺菌卵白にSEを104になるように添加し、得たサンプルのSEの挙動を確認した。サンプル採取、温度測定場所はボールの側面、ホイッパーの外側と内側の3箇所とした。
【結果】
 [A]場所によるバラつきが大きく、最も高いところで75.5℃、低いところは60.8℃までしか上昇せず、全体が十分に殺菌できる温度条件にならないことが示唆された。[B]25g陰性試験では全サンプルで陽性を示し、サルモネラを陰性にできないことが示唆された。原因として、(1)熱がボールにとられて品温が低下すること(2)熱がメレンゲ全体に均一に広がらず品温がバラつくこと(3)攪拌により放熱することが考えられた。以上より、イタリアンメレンゲを調製、使用する際には、使用原料や調製、保存の条件に十分に留意すべきことが確認できた。

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© 2008日本調理科学会
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