日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 1C-a1
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口頭発表
ベビーフードの固さ試験方法で示される圧縮応力の物理学的意味
*佐藤 之紀
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抄録


【目的】厚生労働省が示すベビーフード指針では, ベビーフードの固さの測定には圧縮応力を測定することのできる装置を使用すると記載されている。そこで, この物理量の意味に検討を加えた。
【方法】ベビーフード指針に基づいて, 試薬レベルのペクチンで調製したゾルや鮭のクリームソースなどのベビーフードをそれぞれ規定の大きさの円筒容器に充填し, 円筒型プランジャー (PL)の先端が試料表面に接してから力を計測し, 計測された力をプランジャー底面積で除して応力τ(Pa)とし, プランジャーがゾル内を貫入していく距離(L)ごとにτを計測した。
【結果】ベビーフードの固さ試験法と現行の高齢者用食品試験法の堅さ試験法で算出されるτ-Lの波形を比較すると, 理論通り, L=10 mm近傍までよく一致していた。ベビーフード試験法では, PL停止(L=13.5 mm)直前にτが急上昇する場合が多かったため, PL停止付近で検出されるτの物理学的意味を解析するために, 試料を充填する高さのみを長くしてLの最大値は変化させない条件でτ-Lの波形を比較した。その結果, PLが試料表面に接触した瞬間 (L = 0 mm) には理論上100 %圧縮応力に反映されると考えられるが, L > 1 mmでは圧縮応力よりもせん断応力の寄与が主となり, PL停止付近ではせん断応力に圧縮応力が加わった総合的な結果が検出されていると考えられた。よって, 上記の方法で算出されたτは単に円筒PLの底面にかかっている圧縮応力ではないため, ベビーフードの固さ試験法で規定されている様に真の圧縮応力を測定することのできる装置には圧縮応力とせん断応力を分離する機能を付加させる必要性があり, 少なくとも2種類以上の容器を用いて圧縮応力とせん断応力のそれぞれの寄与率を算出しなくてはいけないことが示された。

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© 2009日本調理科学会
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