日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 1E-a3
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口頭発表
包丁の切れ味の違いがかつらむき動作の筋放電量と作業量に与える影響
*若山 雅文飯 聡西村 由二三久米 雅濱田 明美仲井 朝美芳田 哲也
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抄録


包丁の切れ味の違いが筋放電量や作業量に与える影響を明らかにするため,「切れ味」が良い包丁と悪い包丁を用いてダイコンの「かつらむき」を実施した場合の作業量や上肢の筋電図を測定した.被験者は「かつらむき」に熟練している調理師専門学校の講師9名(男性8名,女性1名)とした.包丁の「切れ味」の定義については,砥石で研いだ直後の包丁を「切れ味」の良い包丁(以下,良包丁),6ヶ月以上継続使用した包丁を「切れ味」の悪い包丁(以下,悪包丁)とした.また,光学顕微鏡を用いて両包丁の刃先を撮影しJIS規格による刃先粗さ(Ra)を算出した.筋電図の測定部位は,左右の前腕屈筋群,前腕伸筋群,上腕屈筋群,上腕伸筋群の計8ヵ所とした。また筋電図の測定と同期してビデオ撮影と右肘関節角度の測定を実施し,「かつらむき」の長さを測定して単位時間当たりの作業量を計算した。かつらむきは,包丁を上下に移動させて行うので,包丁の上下移動1回を1周期とした.悪包丁のRaは良包丁よりも有意に大きかったが,良包丁と悪包丁による「かつらむき」1周期に要した時間や,単位時間当たりの作業量に顕著な差異はみられなかった.しかし,包丁を持っている手の前腕屈筋群の単位時間当たりの筋放電量は,悪包丁が良包丁よりも有意に高値を示した.以上の結果より,熟練者はRaが大きい「切れ味」の悪い包丁を用いて「かつらむき」を実施すると,筋活動を変化させて「切れ味」の良い包丁と同様の作業量を維持できることが示唆された.

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© 2009日本調理科学会
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