日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 2A-p1
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口頭発表
京菓子の作製過程におけるこなしと餡の形状変化
*濱田 明美後藤 彰彦佐々木 敦孝植村 健士田中 辰憲久米 雅仲井 朝美芳田 哲也
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キーワード: 京菓子, 包餡, 職人, 手指運動
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抄録


 京都の伝統産業のひとつに京菓子と呼ばれる和菓子の製造業がある。京菓子製作には「包餡」と呼ばれる「餡を生地で包む」基本技術があり、この技術を用いて、茶席の上生菓子や上用饅頭などがつくられている。近年包餡機の利用が増え、この技術が消える可能性があるため、熟練者の包餡技術の解明に取り組んだ。技術の解明には、手指の動作解析と菓子形状の変化の計測が必要と考えられる。先行研究の手指の動作解析により、包餡動作は第1相;包み上げ過程、第2相;閉じ過程、第3相;成形過程の3相に分割され、さらに第1相の動作の特徴が明らかにされた。本研究では手指の動作解析との関連性を解明するために、おもに第1相の菓子の形状の変化について検討した。
 被験者は熟練した菓子職人1名(職人歴14年)、材料は生地にはこなし、餡は小豆餡を使用した。第1相では手指の屈曲を平均9回行っているので、9つの工程に分割し、各工程について3方向から写真撮影を行った。真上からの画像から菓子の回転角度、断面画像からこなしの厚さ、真横からの画像からこなしの高さを計測した。
 菓子は手指が9回屈曲する間に約1.5回転していた。回転角度は一定ではなく、大きな回転と小さな回転がみられた。また、はじめは円形であるが、第2、3工程で楕円形に大きく変化し、その後再び円形に近づいた。こなしの厚さは第4工程まで大きな変化がみられたが、それ以降あまり変化はみられなかった。こなしの高さは第4工程まで大きな変化がみられたが、それ以降はほぼ一定であった。これらのことから、第1相の包み上げ過程では、第4工程までにこなしの包み上げをほぼ完成させておき、第4工程以降は微調整をしていると考えられる。

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© 2009日本調理科学会
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