抄録
【目的】食育の重要性が叫ばれ,食生活改善,向上に向けての取り組みは海外においても実施されており,健康的な食生活の確立が先進諸国の目下の課題の1つといえる.大学生の時期は自炊性活を始める者も多く,食の自立期ともいえ,特に将来の主要な食の担い手となると考えられる大学生女子の食生活に対する意識(食意識)を含めた食生活状況を解析することは今後の食の方向性を推測する上で重要と考えられる.そこで,社会的文化的背景の類似した韓国,異なるオーストリア(欧米)との間で大学生女子の食生活状況を比較し,食生活の現状を把握することとした.
【方法】 2005年12月~2006年12月にかけて、質問紙調査を行い,欠損値を除く大学生女子506名(日本:4大学,276名,韓国:1大学,103名,オーストリア:1大学,127名)のデータを分析に用いた.調査内容は,食事や食品の摂取頻度などの食生活に関する項目,食意識に関する項目であった.各質問項目について,国別にクロス集計,数値化できる項目は評点の平均値を求めるとともに,食意識項目については因子分析を行い,抽出因子の因子得点を算出し,分散分析を行った.
【結果】 食事や食品の摂取頻度において,昼食,夕食,動物性食品や菓子類の摂取頻度は日本の学生が韓国,オーストリアよりも高かった.よく食する調理方法については,調査項目全てにおいて有意差が認められ,日本の学生は焼き物,炒め物を食する割合が他の2国よりも高かった.食意識に関して,36項目中29項目において有意差が認められ,日本の学生の評点の平均値が低い項目が多く,他方,オーストリアは高い項目が多かった.食意識を因子分析したところ,7因子が抽出され,いずれの因子得点においても有意差が認められた.食意識を含めた食生活状況の違いが三国間で明らかとなった.