抄録
【目的】冷凍フライ食品の食感を決定づける要素には様々なものがあるが、衣の食感は冷凍フライ食品の品質評価項目の中でも非常に大きなウェートを占めている。そこで冷凍フライ食品に新しい食感を開拓すべく、雑穀を用いたパンを試験製造して乾燥・粉砕し、フライ後の衣の仕上がり状態と、雑穀の種類・配合割合、フライ条件との関係を分析した。
【方法】製粉状態で入手可能な雑穀5種の粉末を使用して、強力粉に雑穀を10%,20%,30%配合したパンを製造した。これをフライ用の試験パン粉として用い、フライ前後における粘弾性特性の測定と食感評価を行った。圧縮時の粘弾性曲線の振れ(振動)を調査し、パン粉のもつカリカリ感、サクサク感にかかわる振動特性を分析した。またフライしたパン粉の場合は、2種類のフライ油と3水準の温度条件(160℃、170℃、180℃)でフライを行い、その食感評価を行った。雑穀の種類、雑穀割合及びフライ条件をインプット、食感品質にかかわる粘弾性曲線上の振動特性値及び人の官能試験評価値をアウトプットとした食感モデルとして、ニューラルネットワークからの出力を確率分布母数とするモデルを検討した。
【結果】実測データ30点を用いてモデル内にあるニューラルネットワークをトレーニングした後、のべ20名の被験者の雑穀由来パン粉を用いたフライの食感評価分布を予測し、予測成功確率を計算したところ63%を得た。確率的な予測結果ではあるが、テクニカルなフライ食品の製造条件の参考値を得るための一つの手法としての価値が見出された。
謝辞 本研究を遂行するにあたり、粉体工学情報センターより平成20年度研究助成をいただいた。ここに記して深く感謝の意を表する。