日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 2P-36
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ポスタ-セッション
海藻の食物繊維による高リン血症改善効果の検討
*片井 加奈子木村 幸香杉崎 香菊地 浩子
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キーワード: リン酸, 腎不全, 食物繊維
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抄録


 近年、食生活の多様化に伴い、加工食品などの利用が高まり添加物として摂取されるリン酸塩が増加している。一方、腎不全で見られる高リン血症治療は、リン制限食摂取や腸管内でリン酸を吸着除去することを目的として経口リン酸吸着剤が用いられている。
 我々は、今回、腎不全モデルラットの食餌にアルギン酸と、耐酸性でリン吸着性が高いと報告されている水酸化鉄を同時に添加し、腸管内での食品成分の荷電を利用してリン酸が腸管内で吸収されることなくそのまま糞中に排泄でき、高リン血症を改善でると仮説を立て研究を行った。
 方法は、Wister系雄性の5/6腎摘出ラットに高リン食を負荷して高リン血症を誘発させた上で、アルギン酸と鉄を添加した食餌を与え腎不全モデルラットを作成して血中及び糞中、尿中のリン、カルシウム、鉄濃度の変化や腎機能を検討した。
 結果、高リン食投与により、解剖時の血中リン濃度は普通食群(N群)7.59±2.60mg/dlに対し、高リン食群(HP群)9.34±1.27mg/dl、高リン+鉄添加食群(HPF群)8.20±0.94mg/dl、高リン+鉄・アルギン酸添加食群(HPFA群)10.32±1.27mg/dlであった。HP群に比べHPF群は低下傾向を示し、HPFA群は上昇傾向を示した。そして、HPF群とHPFA群の血中リン濃度の間には有意な差 (p<0.05)が見られた。一方、腎機能の指標である血中尿素窒素濃度はN群12.0±2.5mg/dlに対し、HP群31.6±10.3mg/dl (p<0.01)、HPF群27.9±10.1mg/dl (p<0.05)、HPFA群21.5±3.9mg/dl (p<0.01)であり、アルギン酸を付加することにより腎機能の増悪が軽減した。また、糞中リン排泄量は、HP群294.1±26.6mg/dayに比べHPF群312.5±39.5mg/dayで有意差は見られないものの増加傾向を示した。
 以上より、アルギン酸・鉄の複合体による高リン血症改善効果は見られなかったがアルギン酸、水酸化鉄ともリン酸吸着能を示し腎機能増悪防止効果が認められた。
 尚、この成果の一部は2008年度同志社女子大学研究奨励金によるものである。

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© 2009日本調理科学会
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