抄録
【目的】 一般に基本味の「味」の感じ方は、味変容物質、ハイドロコロイド、油脂、温度等の因子によって異なるといわれている。今回は、基本味に影響を及ぼす因子のうちで、油脂について調べた。甘味料を添加したゾル試料ならびにゲル試料を調製し、油脂の添加量を変化させ、甘味の感じ方の相異を官能評価によって調べることを目的とした。
【方法】 年齢18~20歳の健康な女子学生15~28名をパネルとし、甘味試料としては、スクロース、D-フルクトース、キシリトールの3種類、デンプン試料としては、うるち米デンプン、小麦デンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプンの4種類、油脂は食用コーン油が用いられた。パネルは、甘味強度を-3から+3の両極7点評点法で官能評価した。甘味強度は評点の平均値(以下、平均評点)を求めた。
【結果】 コーン油の添加量を変化させた油脂添加甘味試料(甘味料・デンプン・コーン油を含む)は、基準甘味試料(甘味料・デンプン)に比べ、コーン油の添加量が増加するとともに、平均評点が小さくなっていることがわかった。コーン油の添加量を変化させた油脂添加甘味試料では、ゾルであっても、ゲルのように硬い場合であっても、コーン油の添加量が増加した場合に、甘味が「より弱く」感じられることがわかった。なお、ゾルの場合に、油脂添加量が増加したとき、甘味がやや弱く、ゲルの場合に、油脂添加量が増加したとき、甘味が非常に弱いという傾向がわずかにみられた。油脂の添加量を変化させた試料について、デンプンの種類よって甘味強度の変化に顕著な特徴はみられなかった。