抄録
【目的】一般に、温度によって化学呈味成分や飲料の味の感じ方が変化するといわれている。化学呈味成分の温度のちがいによる感受性の相異に関する古典的研究は数多く見られるが、最近の研究は少ない。相容れない報告も多く、必ずしも一致した傾向が得られていない。そこで味の感じ方に及ぼす温度の影響を調べることとした。
【方法】甘味料および市販甘味飲料を用いて官能評価法によって甘味強度を測定した。甘味料としては、スクロース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マルトース、エリスリトール、キシリトール、D-ソルビトール、マルチトールの8種類を用いた。市販甘味飲料は11種類である。パネルは、甘味強度を-3から+3の両極7点評点法で官能評価した。パネルは、短期大学に在籍する年齢18~20歳の健康な女子学生27名である。検査の液温は、7℃、43℃、20℃の3条件とした。官能評価の評点データは、評点平均値を算出し、平均評点±標準誤差で表した。
【結果】甘味料については、その種類や温度の違いによって甘味の感じ方がさまざまであるという結果が得られた。一方、市販甘味飲料では、冷やすとヒトが感じる甘味強度が弱くなり、暖めると甘味強度が強くなる飲料が多いことが示された。甘味料は香気成分等を含まないが、市販甘味飲料は香気成分等を含む。このことが、2つの実験結果に差異がみられた要因の一つではないかと考えられる。温度の違いによる甘味の感じ方には、香気成分等が関与していることが示唆された。