日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成22年度日本調理科学会大会
セッションID: 2P-30
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ポスターセッション
嚥下障害用ゼリー食への展開によるにおいの変化
林 千紗都廣江 慧子三好 絢子*真部 真里子
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キーワード: ゼリー食, GC-O分析, におい,
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抄録
目的】高齢期には咀嚼・嚥下機能の低下により今まで通りの食事が摂れない人が少なくないが、「口からおいしく食べる」ことはQOLを高めるために極めて大切である。そこで、「温かいものは温かく提供する」ために近年開発された耐熱性ゲル化剤に注目し、原材料組成の異なる3種類の耐熱性ゲル化剤を用いて、普通食“照焼鮭”をゼリー食へ展開させた。食嗜好において、においが「嫌い」という意識に大きく寄与することが報告されているため、本研究では “照焼鮭”のゼリー食への展開によるにおいの変化を検討した。
方法】ゼリー食のテクスチャーをクリープメータにて測定し、特別用途食品の嚥下困難者用食品許可基準と聖隷三方原病院による食品物性基準を基に、ゲル化剤濃度を決定した。においは、ゼリー食を55℃保温した時のヘッドスペース中の香気成分をSPME法によって抽出しGC-O分析した。各ゼリー食のにおいプロファイルを作成し、普通食および普通食に水を混和したものと比較した。
結果】いずれのゲル化剤を用いたゼリー食でもゲル化剤特有のにおいが検出された。また、普通食で認められたにおいのうち、ゼリー食に展開することによって検出できなくなったにおいがあった。このうちのいくつかは、普通食に水を混和しただけで消失し、さらにゲル化させることによっても消失した。すなわち、ゼリー食への展開によるにおいの変質は、ゼリー食への展開過程に共通するものとゲル化剤に固有のものの2段階に分けられた。以上のことから、ゼリー食への展開によるにおいの変質は避けられないが、それを最小限にするためには、ゲル化剤の選択に留意する必要があると考えられた。
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© 2010日本調理科学会
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