抄録
【目的】近年、化石燃料の代替として、バイオマスからアルコールを作りバイオ燃料とする方法が検討されており、廃棄パンをその原料として活用することが期待される。しかしパンは、小麦タンパク質の主成分であるグルテンが強固な網目構造を形成していることや水に不溶なことが、取り扱う時に問題となる。本研究ではグルテンの網目構造をプロテアーゼにより分解し、アルコール生産のために利用しやすい形にすることを試みた。
【方法】パンをプロテアーゼ溶液に浸漬し、懸濁状にすることを試みた。パンはリーンなパン、砂糖20%添加パン、バター30%添加パンを作製した。プロテアーゼはプロテアーゼN、パパイン[ともに天野エンザイム(株)]、プロチン[大和化成(株)]を使用した。パンを7 mm角に切り(7 mm角パン)、0.2%各プロテアーゼ溶液2 mlに37℃で18時間浸漬した。またリーンなパンを1/2にカットし(1/2パン)、0.2%プロテアーゼN溶液100 mlに37℃で18時間浸漬した。
【結果】各プロテアーゼ溶液に浸漬した7 mm角パンはどれも形が崩れていた。特にプロテアーゼN溶液に浸漬したパンは、ほぼ懸濁状になっていた。プロテアーゼN溶液に浸漬した1/2パンは、パンの原型を留めておらず、ほぼ懸濁状になっていた。このときのパンのグルテンをSDS-PAGEにより観察すると、タンパク質の分解が顕著に見られた。本研究によりパンをプロテアーゼ溶液に浸漬すると、グルテンを分解し、懸濁状にすることが可能であると考えられた。