抄録
【目的】米の新たな利用として米粉を用いた各種のパンが開発されている。物性の改良を図る目的で、うるち米飯を食パン材料に混合し調製したところ、強力粉食パンに比べて軟らかく、しっとりとした嗜好性の高い食パンが得られ、うるち米飯の粘りの関与が示唆された*。そこで本研究においては、うるち米飯よりも粘りの強いもち米飯が食パンの物性および食味特性に及ぼす影響を、強力粉ならびにもち米粉食パンと比較検討した。
【方法】もち米は新潟県産こがねもちを用い、米重量の1.0倍の加水量にて炊飯した。米飯は約60gずつラップに包み、-20℃にて凍結し、使用の際には電子レンジにて解凍後、10分間放冷したものを用いた。材料は強力粉300g、ドライイースト6g、ショートニング6g、砂糖9g、塩4.5g、水195gとし、これらの材料と共にもち米飯またはもち米粉を混合し、家庭用製パン機を用いて調製した。もち米飯は強力粉の10、20%置換、もち米粉は10、20および30%置換とした。ファリノグラフによる生地の混捏特性、食パンは菜種法により膨化倍率を求め改良型テンシプレッサーによる物性測定ならびに官能評価を行った。
【結果】1)もち米飯を置換した食パンの膨化倍率は10%置換で1.26倍、20%置換では1.34倍と強力粉100%に比べて顕著に大となった。2)物性測定から、もち米飯を置換した食パンは置換率の増加に伴い軟らかさを増した。3)官能評価から、もち米飯を置換した食パンはきめが均一で、しっとりとした軟らかいパンと評価された。うるち米飯を置換した食パンと比較したところ、もち米飯食パンは、きめの良さ、香りにおいて好まれた。
*濱西知子・平尾和子・高橋節子:2005年日本家政学会大会、要旨集p.150