抄録
目的 すでにかつお節の普通肉のみから調製した「だし」は「あっさりしたうま味」をもつが、血合肉のみから調製したそれは、うま味が弱く異味や「くせのある味」をもつこと、さらに普通肉に血合肉を一定の割合で混合したものは「あっさりしたうま味」のほかに、深みや「こく」が備わり、調和のとれた風味を与えることなどを明らかにした。そこで、今回は普通肉と血合肉の主要な成分を分析し相互に比較して、それぞれの肉の特性を解明することを目的とする。
方法 かつお節(本枯れ節と荒節の雄節)から血合肉および普通肉を削りとったのち、常法により「だし」を調製したのち、遊離アミノ酸、核酸関連物質、有機酸などの含量を測定し、相互に比較した。
結果 普通肉のみから調製した「だし」には本枯れ節と荒節にかぎらず、血合肉のそれに比べてヒスチジン(遊離アミノ酸)、アンセリン(ジペプチド)、イノシン酸(核酸関連物質)および乳酸(有機酸)が多いことが明らかとなった。一方、血合肉はタウリン(荒節)およびイノシン(荒節)に富むこともわかった。これらの成分のなかでイノシン酸はうま味に、ヒスチジンと乳酸は酸味、うま味、「こく」などの発現に寄与するとみなされているので、このような成分が普通肉の呈味を構成する主要なものであると判断された。しかし、血合肉のもつ特有の、異味や「くせのある味」については不明で、今後検討を必要とすることがわかった。