日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成24年度日本調理科学会大会
セッションID: 1C-a5
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口頭発表
水の硬度が牛肉の硬さに及ぼす影響
*村上 恵吹山 遥香岩井 律子酒井 真奈未吉良 ひとみ
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抄録

【目的】肉の煮込み料理における水の硬度の違いが、肉の硬さにどのような影響を与えるかについては多くの報告がされているが、その見解は異なっている。そこで本研究では、煮込み料理における水の硬度の違いが牛肉の硬さに及ぼす影響を、官能評価と物理化学的測定により検討した。
【方法】20代の女子大学生を被験者として7段階評点法、2点比較法による官能評価を行った。水は硬度300の硬水と硬度50の軟水を使用した。3cm角の牛もも肉を重量の4倍量の水で60分加熱したものを試料とした。また、硬さに影響を及ぼす要因を調べるために、牛肉の破断測定、ゆで汁のカルシウム量、ヒドロキシプロリン量についても測定を行った。
【結果】官能評価の結果から硬度300が硬度50に比べてにおい、味、総合評価の項目において有意に高い値となった。硬さについては、硬度50に比べ硬度300を軟らかいと感じる人がわずかに多かった。評価間の相関を調べると、硬さが総合評価に最も関与していることがわかり、硬度300を使用した肉は軟らかく、好まれる傾向にあった。また、破断エネルギー値においても硬度300は硬度50よりも有意に低い値となった。ゆで汁のカルシウム量は、硬度300では加熱によって有意に減少したが、硬度50は増加する傾向がみられた。ゆで汁中のヒドロキシプロリン量には硬度300、硬度50での違いはみられず、硬度の違いによるコラーゲンの溶解度には差は認められなかった。以上の結果より、硬度300で調理した牛肉は総合評価でおいしいと評価され、その要因として牛肉の軟らかさが関与していると考えられた。従って、牛肉の煮込みには硬水が適していることが示唆された。

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