抄録
【目的】近年、社会が大きく変化し、食を取り巻く状況や考え方などもめまぐるしく変化している。正月の代表的な行事食の雑煮も、年々変化していると思われる。本研究では、現時点における雑煮の実態をまとめた。
【方法】平成21年に本学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」で、全国一斉に行事食についてのアンケート調査が行われた。本研究では、このアンケート調査のデータから、正月の雑煮に焦点を当て、都道府県毎に集計した。なお正月と雑煮の認知と経験については回答のあったものについて、他の項目については全ての回答についてまとめた。
【結果と考察】すべての都道府県で90%以上が正月を認知し経験していた。雑煮は沖縄県を除き96%以上が経験し、「毎年食べる」「時々食べる」の合計は, 全国平均で97.9%であった。もちの形状は糸魚川-関ヶ原-熊野新宮の線で東側は角もち、西側では丸もちとなり、従来いわれているものと同様の結果を示した。味付けでは「すまし」が全国的に行われていた。「白みそ」は近畿地方と四国地方の一部で、「あずき」は中国地方の一部で大きな値を示し、これらの地方では同時に「すまし」も喫食されていた。調理方法では「角もち」と「焼く」で強い正の相関が, 「丸もち」と「焼く」で、強い負の相関が見られた。全国的に従来からいわれている傾向を示したが、境界線が曖昧になりつつあり、均一化していることが示唆された。