日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成24年度日本調理科学会大会
セッションID: 1P-12
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ポスター発表
石川県における行事食の調理文化 -あえのこと(3)-
*川村 昭子中村   喜代美新澤 祥恵
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抄録

【目的】ユネスコの世界無形文化遺産に登録された奥能登地区に伝わる農耕儀礼「あえのこと」は、田の神様をもてなすもので旧来は戸毎に実施されていた。近年は減少しつつあるものの一部には伝承されている。これまでに、柳田と輪島における本行事の実状を報告したが、本報では両者の比較検討を行った。
【方法】1)日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食-」に「あえのこと」を加え、2010年4月に石川県内19市町村の食生活改善推進員461名を対象とし、認知・実施状況、この行事で食する食べ物・料理の内容について調査した。2)2011~2012年に石川県能登町(旧柳田村)と輪島市で行われた行事について調査した。
【結果】1)行事の実施(経験)率は県内平均6.1%と低く、中で奥能登の輪島市20.0%、能登町33.3%、珠洲市29.6%であったが、他の市町村では極めて少なくなっていた。認知率は40.6%で、奥能登地区が高い傾向であったが、特にこの3地区が特化してはいなかった。2)両地区とも栗の木の箸が用いられた神膳と併せて、箕に田畑の収穫物が用意され、特に子孫繁栄を意味する二股大根が供えられていた。他に甘酒やぼた餅も供えられ、「田の神様送り出しの儀」(2/9)では、鏡餅と串柿が用意されていた。3)「お迎えの儀」(12/5)「送り出しの儀」ともに尾頭付きの生魚(焼き魚は「田が焼ける」につながることから避ける)が準備されていたが、輪島は鯛であり、柳田はハチメである。特に柳田ではこの行事に限ってはハチメを準備するとのことであった。また、田の神の宿る「よりしろ」は、輪島は松と栗の木であるのに対し、柳田は榊であった。この「よりしろ」を、輪島では神棚に托するのに対し、柳田では籾俵に托するなど差異がみられた。

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