抄録
【目的】ガスコンロ調理の特徴のひとつは、炎を見ながら自分で火加減を調節することである。本研究では、調理経験が比較的少ない小学生と65歳以上の男性を対象に、ガスコンロを使っての調理体験が意識と調理操作にどの様な影響を及ぼすか、また調理体験が日常生活の意識や行動に対してどの様な影響を及ぼすかについて調査した。【方法】小学5,6年生22名と65歳以上の男性16名を対象に、ガスコンロによる調理実習を1カ月ごとに4回実施し、実習のたびに料理数を一品ずつ増やしていった。実習後、アンケートによりガス調理への意識を調査し、変化を比較分析した。また実習終了時に聞き取り調査を行うとともに、調理中の表情の変化、調理操作の様子を記録するために動画撮影を行った。さらに小学生と保護者を対象に実習終了後2か月経過した時点での小学生の意識変化を、高齢者では実習1回目と4回目終了時の意識変化を、アンケート調査により分析した。【結果】アンケートの結果、小学生では体験調理後に「家族の為に調理したり手伝った」が85%で、その多くで調理操作に何らかの工夫をした様子が読み取れた。また、調理体験の反復によって調理技術が習得できるだけでなく、家族で調理や食べ物について話す機会が多くなったなどの食育での意識にも影響することが示唆された。高齢者では、ガスコンロ調理の反復によって「楽しい、おいしくできる、簡単」との意識の変化が見られ、「集中することができ、その集中力が他のことにも生かされる気がする」と考える傾向があった。小学生も高齢者も聞き取り調査とアンケートの自由記述では、調理実習の反復により、前回より上手にできたという達成感が生まれたことが示された。