【目的】海津市はトマト、きゅうり、大根などの農産物の生産が盛んであり、特に柿は南濃町において約150軒の農家により約80haの畑で栽培されており、年間800トン生産されている。そのうち規格外や表面に傷がついて廃棄される柿が10%を占めることから、廃棄される柿を用いて、料理などに活用しやすく機能性を有する柿酢の製造法について検討することを目的とした。
【方法】海津市産の富有柿のへたと種を除去し、ホモジナイズ後、定期的に混合しながら10℃で2か月間自然発酵させたものを試料とした。得られた柿酢について、酸度として酢酸、うまみとしてグルタミン酸、甘味として糖度を測定し、合わせて酢酸以外の有機酸についても測定した。酢酸と他の有機酸はHPLC(分析カラム:野村化学Develosil ODS-HG-5)、グルタミン酸はHPLC(OPAプレカラム誘導体化法、分析カラム:日本分光CrestPak C18S)、糖度は糖度計(手持屈折糖度計D形:島津理化器)を用いて測定した。
【結果】試作した柿酢は市販の穀物酢と比べ、糖度が3倍、グルタミン酸量は10倍以上であった。穀物酢が酢酸以外の有機酸を含まないのに対して、作製した柿酢にはリンゴ酸やコハク酸が含まれ、柿酢の味や香りに寄与するとともに、腸内環境に関与するなどの生理作用も期待できる可能性が考えられた。市販されている従来の柿酢はリンゴなどを加えて味の調整などがされているが、海津市産の柿のみを用い、本方法で作製した柿酢は、リンゴ由来のリンゴ酸に頼ることなく、柿の発酵だけで、「おいしい」柿酢(甘味があり、うまみが強く、多種の有機酸を含む柿酢)を製造できる可能性があることが示唆された。