日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-40
会議情報

ポスター発表
岡山県地方におけるサワラ及びサヨリの食習慣
畦 五月
著者情報
キーワード: サワラ, サヨリ, 地域性, 食習慣
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 岡山県では近年サワラに注目が集まりその使用頻度が上昇傾向にある。江戸時代の料理書である「献立筌」を紐解くと、献立を作成する際の手引きとして、サワラの代用としてサヨリを使用するとの記述がみられる。そこで、これら二種の岡山県での食習慣からその代替の要因、及び食習慣の形成要因を探る一助とした。
【方法】現代のデータは日本調理科学会特別研究「魚類特別調査」(平成15・16年実施)より、大正から昭和初期は「日本食生活全集」より収録した。江戸時代のデータは、「翻刻江戸時代料理本集成」「日本料理秘伝集成」などから、岡山県のデータは岡山藩の記録である「御後園諸事留帳」より収集した。
【結果】現代、サワラ(幼魚名はサゴシ)とサヨリの使用事例数は、岡山県が最も多い。その調理法は、サワラでは焼き物が、対してサヨリでは刺身が最多であり、この調理法は昭和初期より継承されている。特記すべきは、昭和初期の岡山県ではサワラがタイに並ぶ食材として婚礼の膳の刺身として使用され、最上級の魚としてランクされていた点である。二種は江戸時代の岡山藩の産物として認定され、後楽園の宴席で使用されていた。その調理法は、魚種毎にあるいは、使用階級、行事毎に確立されており、代替された記録は確認されなかった。二種はその漁獲量が岡山県で豊富であり、かつ品格を備えている魚であるため高身分階級の行事食へ利用された。つまり二種の利用は、地理的要因、経済的要因など各種の要因が重層的に織りなされ、岡山県地方での食習慣を形成したと考えられる。

著者関連情報
© 2017 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top