抄録
【目的】近年、伝統的な行事食の実施率が低下傾向にある中、正月料理の実施率は比較的高いことが報告されている。しかし、本学の正月料理をテーマとした調理実習では、学生の調理経験が少ない様子が見られた。そこで本学学生における年末年始の食習慣の実態、かかわり方、及び家庭の正月料理に及ぼす調理実習の影響を調べ、効果的な教育内容を検討する基礎資料を得る目的で実態調査を行った。
【方法】調査対象者は本学管理栄養士養成課程1年次に在籍し、調理実習を履修した219名。質問項目は、家庭に伝わる年末年始の特別な食習慣の有無、食習慣の伝承経路、元日の食事内容、調理学実習のレシピ(実習レシピ)使用の有無等である。調査用紙は2016年12月に配布し、2017年1月に回収した。(有効回答率98.6%)
【結果】年末年始の食習慣の実態:家庭に伝わる年末・正月の特別な食習慣は約半数が「特に無いと」回答していた。年末では約6割が年越しそばを、正月では9割以上が雑煮・おせち料理等を準備する習慣があった。正月の調理担当者は祖母・母親が中心であり、学生の参加率は1割程度だった。元旦の食事では、出現数の多い順に、黒豆、栗きんとん、かまぼこであり約7割弱が手作り品と購入品を併用していた。調理実習の影響:約7割が実習レシピを使用して1品以上作っていた。レシピ使用理由は、回答の多い順に「課題作成のため、人に食べさせたい、嗜好にあう」であった。共食者からの意見では「手作りが嬉しい」や「味付けがよい」等が見られた。家庭内で正月料理作りを担当した経験の少ない学生にとって、実習での調理経験は正月料理作りへの参加を促し、家庭の味を再認識する契機となりうることが分かった。