抄録
【目的】季節ごとの行事やお祝いの日に食べる特別の料理を「行事食」といい、特に「正月料理」は「おせち料理」として現代にもその食文化が受け継がれてきた。本学では、自身の食事に関心を持たせるため、調理学実習を履修する学生に年末年始の食事の喫食状況を記録させている。その中で栄養士・管理栄養士課程の学生であっても正月料理に関心が高くないことが浮かび上がった。食育や献立の充実のために行事食を知っていることは重要だと考える。そこで正月料理の認知・喫食状況を調査し、その実態について検討した。【方法】本学学生121名を対象とし12月31日から1月2日の3日間の喫食調査を行った。朝食・昼食・夕食・間食の全てを写真で記録し、いつ、だれと、どこで喫食したかを合わせて回答してもらった。【結果】正月料理の喫食状況は12月31日の夜61.2%、1月1日の朝38.8%、1月1日の夜44.6%、1月2日朝・夜ともに3割程度で大晦日が最も多かった。また、喫食した正月料理の内容は、「全て家庭で手作りした」10.6%、「家庭で手作りしたものが多い」53.2%、「市販品が多い」31.9%「市販品のみ」は4.3%であった。食べない理由としては、「食べる習慣がない」「家族が食べない」「作る・買うのが面倒」が挙げられた。合理化・作業効率の追求される現代において、正月料理は伝承されにくくなっていることが浮き彫りとなった。栄養士・管理栄養士はこのような状況で、行事食の良さをどのように伝え、献立に取り入れるかを改めて考える必要がある。このことから、「行事食」について理解を深め、調理を含めた実践の場を作り、行事食の知識や利用方法を積極的に身に付ける教育が必要だと感じた。