抄録
【目的】
食文化の研究では、各地域で作られている行事食や伝承食の調査は聞き取り調査や古文書などによる場合が多く、料理の実態を把握するのが困難である。そこで本研究では、古来、口伝えによる伝承をされている本膳料理を対象とした。食事の構成、食材、味付け、調理法、栄養価、機能性、外観について客観的数値から評価を行い、和食の基本とされる本膳料理との繋がりや、現在の食事への影響について考察を行う。また、本研究で得られた本膳料理の評価を活用することが、現代に伝えるべき食事の構成、料理法、食材の使用方法、栄養および機能性、現代の日本人が健康を維持するための食事の提案に繋がると考える。
【方法】
研究対象は、1794年創業の岐阜県で最古の料亭である「洲さき」(高山市)とし、平成28年3月から平成29年2月までの1年間調査を行った。食事の構成(品数、食材数など)、食材(特産物、旬食材の使用状況など)、味付け(塩分計、糖度計により一部測定)、調理法(料理ごとに調理方法を分類)、栄養評価、機能性評価(食材の機能性成分について検索)、外観(色の使用頻度や所有割合など)から調査し、各項目について具体化・数値化を図った。
【結果】
1年間の栄養素を平均すると、エネルギーは953±113(kcal)、たんぱく質51.5±6.9(g)、脂質32.3±4.9(g)となり、PFC比率はP:F:C=21.7:30.2:48.1となった。年間を通して10月から1月まではエネルギーが高い傾向にあった。また、献立には毎月川魚(天魚、鮎、岩魚など)のいずれかが用いられており、その品目数は川魚を中心に2~6種類で12月が最も使用品目数が多かった。