日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2A-11
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口頭発表
雑味の視点からみた昆布出汁の光分析手法による解析
*田口 拓実西川 恵梨子伊藤 良栄橋本 篤亀岡 慎一大引 伸昭湯川 徳之亀岡 孝治
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抄録

【目的】日本料理におけるだし汁を評価する際、料理人はうま味と雑味という言葉を用いる。うま味は基本味であることが発見されて以来、だし汁の品質評価をする際の重要な要素として用いられてきた。一方、雑味には明確な定義は存在せず、雑味の視点からの品質評価はほとんど行われていない。雑味の視点を取り入れることで、だし汁に必要なうま味と不要とされてきた雑味の双方のバランスを考慮した複合的な品質解析が可能となる。そこで本研究では、料理人が雑味を感じる昆布だしの特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】試料には真昆布と南アルプスの天然水を用い、原料の前処理・抽出温度・時間が異なる5種類の方法{25℃→95℃(10分間)、25℃→100℃(沸騰後30分間)、25℃→95℃(10分間、刻んだ昆布を使用)、60℃(30分間)、3℃(10時間)}でだし汁を作成した。各だし汁に対して、中赤外分光分析による有機物計測、蛍光X線分光分析によるミネラル計測、高速液体クロマトグラフィーによるアミノ酸計測を行った。加えて、雑味の有無については官能検査を用いて確認した。
【結果】5種類の調理条件のうち、刻んだ昆布を用いて作成しただし汁のみに雑味が確認された。雑味を感じただし汁を他のものと比較すると、うま味成分(グルタミン酸・アスパラギン酸)の含量が少なく、ミネラル(カリウム、塩素)が多い、また中赤外分光スペクトルの糖に由来するピーク値が高い結果となった。よって、雑味を感じるだし汁には「うま味が少なく、ミネラルや糖が相対的に多い」という特徴が確認された。また、雑味はうま味成分量が少なくなることで、他の成分が相対的に際立つことで生じる相対味覚である可能性が示唆された。

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