日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-1
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口頭発表
福島県中通り北部の江戸期婚礼献立の特徴
*津田 和加子菊池 節子
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抄録
【目的】江戸期の饗応献立の変遷についていくつかの報告があるが,福島県中通り北部のものはこれまでになかった。そこで福島市飯坂町の旧家堀切家の江戸期婚礼献の構成とそれに供されている料理や食材に注目し,その特徴について報告することを目的とする。

【方法】堀切家寄託資料(福島県立博物館)と堀切真一郎家文書,堀切三郎家文書(福島県歴史資料館)中の江戸期婚礼献立を中心に資料とした。

【結果】豪農豪商といわれ大庄屋でもあった堀切家の婚礼献立の中で,年時が明確であるものが5件存在した。A寛政8(1796)年10代目治安、B文政2(1819)年治安の次女ふさの聟入り婚、C文政10(1827)年11代目治之、D文政11(1828)年ふさの再婚,E嘉永5(1852)年12代目治宣の献立を比較した。膳部の構成を見るとAとEは,三汁七菜,Cは三汁共七菜であった。これら三の膳の献立は,後に当主になる人物の婚礼である。BとDは,二汁共五菜であった。これらの献立に共通して着座の後に茶菓があり,酒の儀礼に雑煮と鯛鰭の吸物が供されていた。Aのみ破損のため,雑煮からの記載であった。Aは酒の儀礼に続き膳部があり,中酒、酒宴、茶菓の順であった。Eは、酒の儀礼に続いて酒宴があり,膳部,中酒,茶菓となっていた。半世紀の間に,食事形態が推移していく様子が見られた。珍しい食材としては、漢方の川貝(センバイ)や天門冬(テンモンドウ),魚の軟骨(鮫氷や蕪骨)を供していた。また現在は郷土料理となっている「むくり鮒:山形県置賜地方」や,「つと豆腐:会津地方」、「鮟鱇の共和え:福島県浜通り地方」,「けいらん:旧南部藩」などが見られた。菓子類では「いが饅頭:埼玉県北部」「がんじきくるみ:新潟県新発田市」などがあった。
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