抄録
【目的】岐阜市の長良川では鮎を獲る漁法に伝統を受け継ぐ「鵜飼」がある。「清流長良川の鮎」は2015年に世界農業遺産として認定され、現在、岐阜市長良川の鵜飼いは、宮内庁式部職の6名の鵜匠が行っている。鵜匠家ではお世話になった方に感謝の気持ちを込めて「鮎なれずし」を作り、年末に配る風習が残っている。伝統的な「鮎なれずし」を手作りしている鵜匠家から食材の用い方、作り方の特徴を調査し、記録に残すことを目的に調査を行った。
【方法】平成26年から平成29年にかけて鵜匠家とその縁者に聞き書きを行い、「鮎なれずし」の作り方等の調査を行った。鮎の準備、下処理、および作成方法の観察と記録を行った。
【結果】「鮎なれずし」は年に1回作られ、11月頃に産卵のために川を下る「落ち鮎」の雄を用いていた。全工程は、①鮎の塩漬け、②水洗い(塩抜き)、③漬け込み、④完成の4工程である。①鮎の下処理後の塩漬けは、約1ケ月間常温保存のため、気温が低くなる時期から開始していた。②水洗い(塩抜き)は、流水で行い、塩の加減は気候を考慮し、食して判断していた。③漬け込みは、桶の下部に飯(ふりめし)を敷き、塩抜きした鮎の腹にも飯を詰めながら漬け込んでいた。桶1段に約15尾の鮎を並べ、それを4段重ねていた。重ね終わりには、竹皮・落とし蓋・枕木を順に乗せ、上に重石をし、軒下等の日陰に1ケ月程度保存した。重石で水が上がるため、その状態を見ながら乾かないように水を補充していた。④完成前に水を捨てて逆押しを行い、半日ぐらいかけ十分な水切りを行った。完成までに約2ケ月をかけて作られる「鮎なれずし」は、伝統的な製法と先人の知恵が多くみられ、鵜匠家の食文化を継承するものであった。