主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】糖質の過剰摂取は肥満や糖尿病を誘発する要因の一つとされる。近年の健康志向の高まりにより,糖質制限への関心が強くなっている。一方で,糖質を減らした減糖料理は,甘味が不足しておいしくないと考えられることが一般的である。鰹だしは多様な成分を含んでいることから,減糖料理の呈味改善により嗜好性を維持・向上できる可能性があると考えた。本研究では,鰹だしが減糖料理の呈味に与える影響に着目し,基礎的な検討を行った。
【方法】鰹荒節(薄削り)を熱水抽出したものを鰹だしとして試験に用いた。上白糖,醤油および鰹だしの混合液について,鰹だし濃度を1,2,4,8 %と増加させたときの呈味の変化を調べた。続いて,一般的に鰹だしと糖を使用する里芋の煮物とひじき煮の2種類の料理について,鰹だしの濃度を1,3,6 %と変化させたときの呈味の変化を調べた。官能評価は,甘味やうま味などの呈味項目について7段階評点法で行った。パネルは社内味覚試験に合格した男女11〜12名とした。
【結果および考察】混合液では,鰹だし濃度が高くなるにつれ,酸味,うま味,塩味,苦雑味および味全体の濃さの評価点が上昇した。甘味の評価点は,鰹だし濃度が1 %から2 %に増加するときは上昇傾向であったが,4 %以上の濃度では逆に下降傾向であった。里芋の煮物では,鰹だしの濃度が高くなると,うま味,塩味および味全体の濃さの評価点が上昇し,甘味の評価点は上昇傾向であった。一方,ひじき煮では,酸味以外は呈味の変化が認められなかった。以上の結果より,鰹だしは減糖料理の呈味に関連しており,里芋の煮物では甘味に影響する可能性がある。