日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 1A-2
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口頭発表
長期保存によるクズでんぷんの特性の変化
*久井 志織村元 由佳利松井 元子
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抄録

【目的】クズでんぷんは和菓子や日本料理に古くから用いられている。クズでんぷんを用いる料理人の間では新しいものより保存したものの方が利用しやすいと経験上言われているが,その違いを科学的に評価した報告はない。そこで本研究では,長期保存によるクズでんぷんの特性の変化について検討した。

【方法】試料は,製造から1年未満の吉野本葛((株)八十吉)と1〜14年間保存したものを用いた。まず,クズでんぷんの色彩,水分含量を測定した。次に,試料の10%懸濁液を一定条件で糊化した後の物性(かたさ,付着性)を厚生労働省「えん下困難者用食品たる表示の許可基準」の測定法に準じて,経時的(調製後35℃で保存,15分ごとに210分まで)に測定した。さらに,糊化特性,でんぷん粒の粒度分布を測定した。

【結果および考察】クズでんぷんの色彩は,保存期間が長くなると,白色度は低く,黄色度は高くなった。水分含量は,製造から1年未満のクズでんぷんで16.1%,5年保存で14.1%,14年保存で12.8%であった。糊化でんぷんのかたさ(最大荷重)は,調製105分後において,製造から1年未満のもので5.7N,1年保存で6.4N,3年保存で6.7N,5年保存で9.4N,10年保存で7.1N,14年保存で7.5Nであり,保存によりかたさが変化することが示唆された。一方,付着性には大きな違いは認められなかった。また,1〜5年間保存したクズでんぷんの糊化特性やでんぷん粒の粒度分布に関しても,保存による大きな変化は認められなかった。以上の結果から,クズでんぷんの特性は保存期間によって様々な変化をすることが示唆され,今後はこの変化の要因について検討する予定である。

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