【目的】近年,肥満や生活習慣病などの予防に役立つ機能性油脂が注目されている。その機能性は構成する脂肪酸や炭素鎖の長さで異なるが,機能性油脂を添加した食品の力学特性と食べやすさに関する報告は少ない。そこで,本研究では機能性油脂を添加したマッシュポテトの力学特性と食べやすさについて検討した。
【方法】ポテトフレークに温水を加え,マッシュポテトを調製した。マッシュポテトに加える機能性油脂はエゴマ油,大豆油,オリーブ油の3種とし,対照としてサラダ油を用いた。それぞれの油脂をマッシュポテトに10または25%添加したものを試料とし,試料温度を5,20及び40℃とした。力学特性として,油脂の粘度,マッシュポテトのテクスチャー特性,降伏応力及び動的粘弾性を測定した。また若年女性を対象に官能評価を実施した。
【結果および考察】油脂の粘度はオリーブ油が最も高く,エゴマ油が低く,大豆油とサラダ油はその中間でほぼ同じ値を示し,温度が高くなるに従い低値を示した。マッシュポテトの硬さと付着性,降伏応力,貯蔵弾性率は温度が高くなるに従い,低値を示した。また,25%油脂添加試料が10%油脂添加試料に比べて,低値を示したが,油脂の種類による差は認められなかった。官能評価では,油脂の添加量に関わらず,かたさ,べたつき感,残留感及び飲み込みやすさでいずれの油脂間においても差は認められなかった。しかし,20℃試料では,風味と総合評価はオリーブ油添加試料がサラダ油添加試料に比べて,有意に好まれないと評価された。このことより,機能性油脂の粘度はマッシュポテトの力学特性と食べやすさにほとんど影響しないが,油脂が持つ風味はマッシュポテトの嗜好性に影響を及ぼす可能性が示唆された。