日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: A-5
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口頭発表
塩麹添加による食パンの小麦アレルゲン低減化への影響
*京極 奈美谷口 明日香小林 理恵
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抄録

【目的】小麦アレルゲンの低減化には種々の手法を用いて検討されている。本研究では、発酵調味料である「塩麹」に含まれる酵素による、食パン中の小麦アレルゲンタンパク質の低減化の有効性を検証することを目指している。既に報告したように、市販塩麹は製品ごとに酵素活性が異なり、これらを食パン生地に加えて調製すると物性と色に差異が見られたものの、嗜好性は高かった。しかし、塩分量の調整のために塩麹の添加量が異なっていたため、今回は塩麹の添加量を統一配合した食パンの品質を評価し、アレルゲン低減化への影響を明らかにした。

【方法】前報と同じ市販塩麹3種を使用し、ホームベーカリーを用いて食パンを調製し、小麦粉で調製した基準パンを各評価の対照試料とした。食パンに添加する塩麹量を一定にするために、食塩と水分量のみ配合量を変更して調製した。また、酵素を加熱により失活させた塩麹を生地に添加し、酵素活性の有無による品質への影響を各食パンと比較した。品質評価は前報と同様に、食パンの比容積の測定と5段階評点法による嗜好型官能評価を実施した。アレルゲン低減化の評価は(株)森永生科学研究所のモリナガFASPEKエライザⅡ小麦(グリアジン)を用いてELISA法により測定した。

【結果・考察】官能評価では、基準食パンと比較して塩麹添加食パンが好まれる傾向にあった。また、ELISA法による測定では、プロテアーゼ活性の高い塩麹を添加した食パンにおいて抗原量が低くなる傾向であった。しかし、プロテアーゼ活性が低値であったものは基準食パンと同程度のアレルゲン濃度であった。塩麹添加食パンの嗜好性は高いものの、アレルゲン低減化を期待する場合、市販塩麹の活用には課題が多いと考えられる。

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