日本調理科学会大会研究発表要旨集
2024年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-49
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食品の構造設計による塩味の制御を実現するフード3Dプリント
*山浦 寛大武政 誠
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抄録

【目的】おいしさと健康増進の両立は常に困難であるが、減塩を継続することは容易ではない。一方、表面に大粒の塩を振った食品と、均一に塩を混合して作成した食品と比べると、前者相対的に低塩分量でも美味しく食べられることが知られている。これは、塩分を含めた呈味物質では、局在化により減塩などを含めた味の増強など制御が、呈味物質の使用量削減と両立できる可能性を示唆している。フード3Dプリンタでは、呈味物質を含めて各種成分を設計通りに立体配置することが可能である。本研究ではこの技術を利用して、食品の構造、特に呈味物質の空間配置により、呈味の物質量を対応する味覚を引き出す手法開発を目的とした。

【方法】塩を食品の表面、および内部に配置する構造を3D-CADで設計を行い、塩ありの食品材料(以後フードインク)と塩なしのフードインクを作製して3Dプリントにより食品を製造した。ヒトが知覚した塩味の強さを、官能試験によって評価し、実際に食品に含まれる塩化ナトリウムと比較することにより、構造に起因した味の制御を検討した。

【結果・考察】表面構造、特に舌に接触させた平面上の塩の塩分量により塩味知覚強度が変化した。また、表面上の総物質量として塩分量が固定されていても、表面に塩を配置するパターンに依存して、塩味知覚強度が変化することが分かった。さらに、内部にも塩を配置することによって、塩味知覚強度に加えて、塩味を感じるタイミングを制御することも可能であった。これらの要素を統合すると、物質量としての塩化ナトリウム量が同一であっても、食品内および表面の塩の空間配置により、最大塩味知覚強度や、塩味を感じるパターンを制御可能であることが示唆された。

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