日本調理科学会大会研究発表要旨集
2024年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2A-1
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炊飯時の調理工程が米飯の物理特性に及ぼす影響
*石橋 ちなみ眞鍋 知里小田 結香竹中 重雄
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抄録

【背景】米の炊飯は,米を水に浸漬後,中~強火で温度を上昇,沸騰を持続させた後,弱火で蒸らす方法が一般的である。一方,近年では硬さや粘りといった食感の炊き分け機能を有する炊飯器が販売されており,炊飯時の調理工程(温度,時間等)を変化させることで米飯の食感を調節していると考えられる。本研究では,炊飯温度履歴の異なる炊飯器を用いて,炊飯時の調理工程が米飯の物理特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】炊飯には,3種の家庭用電気炊飯器(以下,A社,B社,C社))を用いた。炊飯時の温度履歴を測定し,「沸騰前」「沸騰後」「炊飯後」をそれぞれ設定した。各時点の米あるいは炊飯液を取り出し,重量,水分量,吸光スペクトル,テクスチャーを測定した。

【結果】A社,B社の炊飯温度履歴は一般的な炊飯方法に類似していたものの,沸騰前および沸騰後の加熱時間がそれぞれ異なっていた。一方,C社は調理工程全体を通して緩やかに温度が上昇し続けた。米飯の重量および水分量はC社,A社,B社の順で多かった。炊飯液の吸光スペクトルから,いずれの炊飯器も沸騰前より沸騰後に多くの澱粉が溶出し,沸騰前はアミロペクチン,沸騰後はアミロースが主と考えられた。米飯の硬さは,B社,A社,C社の順で硬くなる傾向にあり,水分量が影響したと考えられた。米飯の粘着力はB社よりもA社で有意に高かった。A社はB社と比べて沸騰後の炊飯液量が多く加熱時間も長いため,沸騰後に米からの澱粉の溶出が進んだと考えられた。結果,米飯表面に澱粉層(おねば層)が形成されたことにより,A社は粘着力の高い米飯になったと推察された。

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