主催: 一般社団法人日本調理科学会
会議名: 2025年度大会(一社)日本調理科学会
回次: 36
開催地: 東海学園大学
開催日: 2025/08/30 - 2025/08/31
【目的】トマトは生だけでなく、加熱調理した加工食品としても幅広く利用されており、加熱調理により香気に関わる揮発性成分が変化することが知られている。しかし不揮発性成分では、加熱によりリコペンがcis化するなど一部の変化は知られているが、そのほとんどが不明である。そこで本研究では、特に保存性・汎用性の高いレトルト処理に着目し、加熱によるトマト中の不揮発性成分の変化をLC/MSを用いて分析し、レトルト加熱調理工程を想定した成分の挙動を見出すことを目的とした。【方法】ミニトマト (愛知県産アイコ、15.9±3.0 g / 1個) を破砕し、果実量と同量の水を加え、未加熱、ボイル (100 ℃, 30 min)、レトルト処理 (120 ℃, 20 min) の3条件のサンプルを調製した。その後凍結乾燥を行い、粉砕した乾燥サンプルにMeOHと内部標準を加え、不揮発性成分を抽出した。このサンプルをLC/MS (ポジティブモード) で分析し、精密質量値から組成式を求めた。トマト既知成分のデータベースを用いて検出成分を推定し、各成分を内部標準比に標準化することで、加熱加工条件に伴う量的変化を調べた。【結果】LC/MS分析の結果より、加熱により変動がない成分・増加する成分・減少する成分、またレトルト処理とボイル処理で異なる成分に分類できた。トマト果皮の主要フラボノイドであるナリンゲニンカルコンは、いずれの加熱においてもナリンゲニンに閉環した。また、ルチンは加熱の影響を受けず、熱安定性が確認できた。トマトにはエスクレオシドAやトマチンなどのステロイドアルカロイドが存在することが特徴的であるが、成分によって加熱による増減パターンの違いから、構造変換反応が起こっていると考えられた。