2026 年 16 巻 1 号 p. 9-17
新規製品に繋がる新素材の開発を目指し,酵素を活用した有用糖質の創生に取組んできた.そのためのアプローチは,シーズ志向の新規糖質関連酵素の探索を起点とする方法とニーズ志向の既知糖質関連酵素の活用を起点とする方法に大別される.前者において,澱粉からトレハロースを生成する酵素の発見以降,多くの新規酵素を見出すことに立ち合い,それらの成果を基に「環状ニゲロシルニゲロースを主成分とするシラップ」および「新規多分岐α-グルカン」が製品化された.それぞれの新規糖質関連酵素は学術的な価値を有することはもちろん,新たな機能性素材を提供するツールとして多様な使い方が可能である.一方,後者において,文化財修復用接着剤である「古糊」の代替物の開発に至った.さらに澱粉を原料に生分解性高吸水性素材の開発に着手し,現在量産化の検討および用途開発が進められている.このようにターゲット素材はオリゴ糖から高分子多糖にまで拡大しており,酵素修飾とケミカル修飾の融合という領域にも進出しつつある.今後も多様な機能性を示す有用多糖や地球に優しいポリマー基盤素材の開発に邁進しつつ,新規酵素の発見にも貢献していきたい.