抄録
黒毛和種肥育牛の胸最長筋108検体について,理化学分析および分析型パネルを用いた官能評価を行い,黒毛和種牛肉の官能特性に及ぼす粗脂肪含量と脂肪酸組成の影響を検討した.MUFA割合で,理化学分析値と官能評価値を上位群(MUFA割合平均値59.6%)と下位群(同51.2%)に抽出し,比較したところ,官能特性では,甘い香りの評価値のみが,下位群より上位群で有意に高かった.さらに,甘い香りと脂っぽい香りに対して,SFA割合,MUFA割合またはPUFA割合のそれぞれに,粗脂肪含量の効果を加えた2変量を説明変数とした3種類のモデルを用いて回帰分析を行った.いずれの香りでも,粗脂肪含量はモデルを問わず,有意な正の偏回帰係数となったが,甘い香りにおけるMUFA割合が含まれるモデルでのみ,脂肪酸組成は有意な正の偏回帰係数となった.これらのことから,香りの官能特性の中でも,粗脂肪含量は脂っぽい香りや甘い香りと,MUFA割合は甘い香りと正の関係があることが示された.