抄録
【目的】 我々は前回の本学会においてTilt table可動に伴う下肢荷重量の増減に対して、下腿三頭筋と前脛骨筋の筋活動が相反的に増加、あるいは減少することを明らかにした。 今回は臨床的な意義を踏まえ、Tilt tableを静止させた状態での下腿筋活動および足関節角度を変化させた際の足底屈位での下腿筋活動の特性を明らかにすることを目的に以下の実験を行った。【方法】 被検筋は健常男性6名の利き脚の1)腓腹筋内側頭、2)腓腹筋外側頭、3)ヒラメ筋、4)前脛骨筋とした。 Tilt table傾斜角度は45°、60°、75°で足関節角度は底背屈0°で設定した。また、75°位のみで足底板を用いて足関節角度を底屈10°、30°に変化させた。その際、足底板下に体重計を設置した。なお、人体背面の摩擦差を少なくするため、着用する衣服を同一の物とし、ベッドと人体背面間に摩擦の少ないシートを介在させた。足底にかかる力の算出には三角関数を用い、算出された足底にかかる力と体重計にて目測した値の誤差を人体背面の摩擦によるものと考慮し、Fとした。また、足関節角度を底屈位にした状態での足底にかかる力は、Fに対し足底板傾斜による前方への滑落力が働くため、その値をF´とした。筋活動の導出には表面筋電計(Mega ME3000P)を用いた。各傾斜課題の測定時間は10秒とした。Tilt table上立位の積分値(IEMG)は静止立位時のIEMGで除し正規化(%IEMG)した。正規化された%IEMGを用いてTilt table傾斜角度間と足関節角度間での比較を行った。統計処理には一元配置分散分析ならびに多重比較検定を用いた。【結果】 Tilt table75度立位(足関節底背屈0°)の各筋の%IEMGは89から101%であった。なお、傾斜角度が増すにつれて筋活動の増加が認められた。Fの増加に対する%IEMGにおいて腓腹筋内側頭とヒラメ筋に増加傾向が認められたが、有意差は認められなかった。前脛骨筋においてはFの増減に関わらず筋活動は一定であった。また、F´に対する%IEMGにおいて有意差は認められなかった。【考察】 静止立位に対する下腿三頭筋は、三角関数を用いて算出した下肢荷重量比率に対応して活動していた。これは、身体動揺が起こらないことや足関節がTilt table足底板によりほぼ関節運動がないことを考慮した上においても下腿三頭筋の筋活動は荷重量の変化にも対応していると考えた。しかしながら、Fの増加に対して有意差が認められなかった理由として,データのバラツキがみられたことが推察される。前回の研究では、下腿三頭筋と前脛骨筋が相反的に活動し、姿勢制御的なものとなっていた。本結果では、前脛骨筋の活動はTilt tableの傾斜に関係なく一定であったことから、今回の静止立位では下腿三頭筋の筋活動によって自身を支持するための静的保持に似たものとなっていた。