抄録
【はじめに】1997年2月、世界の祭典である冬季オリンピックが長野で開催された。開催決定後、長野県理学療法士会ではオリンピック村診療所にトレーナー室を開設する準備を開始し月1回の技術研修をあわせて行なった。その結果、長野冬季オリンピックでのトレーナー活動は成功に終わり、会員の経験、技術を高めることができた。その後長野県理学療法士会では、この技術を継続、向上させるべく種々のスポーツトレーナー活動を開始した。諏訪郡理学療法士会(会員60名)では1998年から本年度まで諏訪湖マラソンにおいてトレーナーサービスを実施し成果をあげている。本大会は諏訪湖畔を1周するハーフマラソン大会で、例年6000人以上の選手が参加している。現在まで第12回大会313名、第13回大会213名、第14回大会270名の利用者があった。我々が実施しているトレーナーサービスの有効性を確認するため、本年第14回大会においてトレーナーサービス、実施前後にペインスケールを測定し、その結果を検討したので報告する。【対象と方法】第14回諏訪湖マラソン出場選手のうち希望者に対しPTがトレーナーサービスを実施した。選手の主訴となる部位(疼痛部位等)に対し以下の方法を施行した。スタート前の利用者に対し_丸1_ファンクショナルテーピング、_丸2_調整目的のスポーツマッサージ、ゴール後の利用者に対し_丸3_アイスマッサージ、_丸4_疲労回復目的のスポーツマッサージを施行した(_丸2__から__丸4_は10分間施行)。トレーナーサービス実施前後に利用者にペインスケールを用いて症状を0(痛みなし等)から10(最大の痛み等)段階で記載していただいた。【結果】第14回大会での利用者数は270名、利用度は4.5%で、PT数は20名であった。ペインスケール平均値の変化(利用者数)は方法_丸1_5.0→2.8(57名)、方法_丸2_7.9→4.3(35名)、方法_丸3_6.1→2.4(45名)、方法_丸4_6.1→2.8(112名)であった。各方法とも施行後にペインスケールが大きく低下し、施行前後の間に有意差(P<0.01)が認められた。実施部位は出走前は膝、腰、下腿三頭筋が、出走後は下腿三頭筋、大腿四頭筋、膝の占める割合が多かった。【考察】我々が実施したトレーナーサービスは各方法ともペインスケールの結果から有効であることが証明された。出走前からすでに腰や膝に慢性的な症状を持つ選手が多く、これに対し出走前のトレーナーサービスにより症状が緩和しペインスケールが低下した。そして走行中も予防効果をもたらし完走を補助したと考えられる。ゴール後はマラソン経験が少なく下肢筋群に疲労を起こす選手が多かったため利用者が殺到した。それに対しゴール後のトレーナーサービスは消炎鎮痛作用による疲労回復の効果をもたらしペインスケールが大きく低下したと考えられる。以上の効果判定から本活動の有効性と継続の必要性を確認できた。