理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NO469
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測定・評価
近赤外線分光法を用いた至適運動中および運動後の前頭部酸素動態の評価
統合失調症者と健常者の比較
*武田 秀和平野 康之笠原 酉介山下 久実細井 匠牧野 英一郎
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抄録
【目的】統合失調症は,前頭葉や海馬扁桃体などの形態異常や低活性が指摘されている。最近は,近赤外線分光法(NIRS)により,前頭部酸素動態の低下が報告されている。一方,健常者では,至適運動が脳血流量を増加させ,作業効率をあげる報告が散見されるが,統合失調症者の運動における評価はみられない。そこで本研究は,至適運動中及び運動後の前頭部酸素動態について評価・検討した。【対象と方法】対象は,某病院精神科に入院・通院中の統合失調症者8名(男性5名,女性3名,平均年齢37.5歳,身長167.6cm,体重72.1kg,罹病歴12.7年),運動習慣のない健常者14名(男性9名,女性5名,平均年齢40.0歳,身長163.2cm,体重62.4kg)で,全員が右利きである。対象者は評価の主旨に同意し,臨床症状が安定している者で運動機能,呼吸循環器系に重篤な合併症があるものは除外した。前頭部酸素動態は,2ch,放射器センサー付近赤外線モニター(NIR0-300)を用い評価した。測定は,薄暗く静かな環境で,対象者の左右前頭部(Fp1/F3,Fp1/F3)にセンサー(30mm間隔)を装着し,閉眼安静3分後,エルゴメータ(75XL)にて,予備負荷テスト結果から得られた至適強度(50%HRmax前後)の定負荷運動を10分間行い,1分間クーリングダウン後,閉眼安静10分間まで連続測定した。併せて血圧,脈拍,経皮的酸素飽和度も測定した。結果の解析は,NIRSは絶対値の比較に限界があるため,測定中の酸素化ヘモグロビン(O2Hb),脱酸素化ヘモグロビン(HHb)について,対象者毎のパターンの変化を比較検討した。【結果及び考察】健常者の典型例は,運動初期でO2Hbが低下し,5分前後から上昇,運動直後ピークに達しその後は徐々に低下し,運動後10分間でほぼ開始前安静の状態まで戻った。HHbには変化がなかった。統合失調症者では,運動初期に低下したO2Hbは,運動中では顕著な上昇を認めず回復運動後ピークに達し,その後は緩徐に低下した。HHbは健常者同様変化がなかった。左右の半球間の違いが8例中5例に認めた。罹病歴,抗精神病薬処方量によるO2HbとHHbのパターンの違いはなかった。今回の結果から,健常群では運動開始後O2Hbは一過性に低下し,その後上昇し運動後も保っていた。これは,運動初期の皮膚血管収縮と運動中期以降,前頭部血管床の増加が反映されたことが考えられた。統合失調症者は健常者と異なったパターンを示したことから,前頭部低活性や抗精神病薬の血管への影響が示唆された。【まとめ】統合失調症者と健常者の至適運動中及び運動後の前頭部酸素動態について,NIRSを用い評価・検討した。統合失調症者は,健常者に比べて前頭部酸素動態が低く,健常者とは異なるパターンを示す傾向がみられた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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