抄録
【はじめに】前学会において2動作歩行するものの歩行自立度が歩行速度により明確に判別できる可能性を示唆し、3動作歩行では26m/分の歩行速度限界があることと歩行速度での自立度判別が難しいことを報告した。その結果、歩行自立度の判別には歩行速度以外の評価指標におけるより複合的な相互関係の検討が必要と考えられた。そこで本研究では、高齢障害者における歩行自立度と動作数別の歩幅・変動係数、歩調・変動係数との関係を検討し、若年障害者との比較を通してその特性を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は介助なしで10m歩行可能な若年障害者15名(若年群:男性10名、女性5名、年齢52.2±10.5歳)と高齢障害者54名(高齢群:男性19名、女性35名、年齢77.3±6.5歳)であった。疾患分類は、若年群では中枢12名、整形3名、内科0名、その他0名、高齢群では中枢27名、整形22名、内科3名、その他2名であった。3回の10m快適速度歩行の所要時間・歩数を3回計測し、歩幅(ステップ長)・変動係数、歩調・変動係数を算出した。また歩行自立度(自立・監視)、動作数(2動作・3動作)を評価し、自立度・動作数別の歩幅・変動係数、歩調・変動係数を若年・高齢群間で比較した。統計処理はt検定、Mann-Whitneyを使用した(p<0.05)。【結果】歩幅比較では、高齢群における自立35.7±11.8cmと監視27.1±6.0cm間、高齢2動作歩行の自立37.1±12.0cmと監視28.3±6.1cm間、2動作の若年群44.5±13.6cmと高齢群34.5±11.2cm間、若年群の歩行自立における2動作46.7±14.0cmと3動作28.7±9.9cm間に、また歩幅変動係数比較では3動作歩行の若年群1.9±1.5%と高齢群5.4±2.8%間に有意差がみられた。歩調比較では若年・高齢群とも2動作(93.9±18.8歩/分、97.6±19.5歩/分)と3動作群(60.9±4.8歩/分、69.3±30.3歩/分)間および若年・高齢両群ともに歩行自立群のそれぞれ2動作90.5±19.2歩/分、100.8±19.6歩/分)と3動作間(60.9±4.8歩/分、64.7±25.1歩/分)に有意差が認められた。【考察】高齢群では歩行自立度には歩幅が関与し、2動作歩行をするものにおいては歩幅がより強い歩行自立度判別因子となりうることを示していた。2動作歩行するものの歩行速度は高齢群が若年群より明らかに遅かった。また、高齢群の3動作歩行するものの歩幅は若年群と比べ差がないにもかかわらず、歩幅変動係数は若年群に比べ顕著に大きいことから、高齢障害者では3動作歩行するものの歩幅は不安定であることがわかった。若年者と高齢者において動作数の違いが歩調にも明らかな差をもたらし、自立群においてそれがより顕著であったが、歩調は歩行自立度の判別因子にはならないことがわかった。以上の高齢障害者に関する知見は障害者の歩行自立度判別評価指標を考える上での基礎となるものと思われる。