理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP257
会議情報

地域リハビリテーション
当院における家屋評価後の住宅改修の実施状況
*諏訪 勝志井舟 正秀石渡 利浩内山 清一久保 佳子千田 雅子藤井 亮嗣河嵜 利浩田邉 久恵稲員 拓海坂井 志帆江村 匠史川北 慎一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】2000年4月より開始された介護保険制度では、住宅改修が支給項目に含まれ、住宅改修が積極的に行われるようになり、PT・OTの専門的立場による指導が重要となってきている。今回、我々は、当院で指導した住宅改修の特徴について調査し、若干の考察を加え報告する。【方法】対象は、当院でリハビリテーションを施行していた退院患者で、2000年4月より2002年11月までの期間で家屋評価を実施した患者104名(男性50名、女性54名)とした。平均年齢は73.3歳±10.3歳、主な疾患は、脳血管疾患62名、整形疾患23名、内科疾患13名、その他6名であった。調査方法は、カルテを参照し、調査項目は、住宅改修の有無と内容、退院先、在院日数、退院時Barthel Index(以下B.I.)、家屋評価実施時期などであった。【結果】住宅改修を行ったのは、104名中72名であった。改修場所と内容は以下の通りである。トイレは55件で、内容は、全面改修(和式を洋式に変更、手摺り設置)が9件、部分改修は、手摺り設置42件、床上げ5件、据え置き式便器設置3件、戸の取り替え4件であった。浴室は43件で、全面改修(手摺りも設置)が8件、部分改修は、手摺り設置35件、戸の取り替え1件であった。玄関は30件で、全面改修が5件、部分改修は、手摺り設置25件、段差緩和・解消9件、スロープ6件であった。廊下は23件で、手摺り設置9件、床上げ6件、段差解消9件、幅拡張2件であった。階段は2件で、手摺り設置であった。居室は7件で、全面改修5件、戸の取り替え2件であった。洗面所は1件で、W/C用に変更であった。また、退院時B.I.は、69.0±27.1点(住宅改修あり72.7±25.0点、住宅改修なし60.8±30.2点)であった。【考察】当院では、居宅介護支援事業所を併設しており、ケアマネージャーと共に退院予定患者の退院準備・生活環境整備に積極的に関わっている。障害者が自宅で生活するためには住宅改修は重要であり、当院で指導した住宅改修の特徴について調査した。多くのケースでは、複数箇所の改修が多く、特にトイレ、浴室の改修が多かった。しかし、全面改修を行ったケースは少なく、ほとんどが手摺りの設置が中心であった。その理由として、段差の多い家屋が多く、完全な段差解消は困難であるため、必要最低限の改修とし、福祉用具(ポータブルトイレ、シャワー椅子など)も併用したことが考えられる。入浴が困難な場合は、自宅での入浴を避け通所サービスを利用するというケースも多かった。また、退院時B.I.では、住宅改修なしの方が点数が低かったが、これは、ADL能力が高く指導のみで終わったケースもあったが、反対にADL能力が低く住宅改修するに至らないケースが多かったためと思われる。最近は、建築業者が家屋評価に同席することもあり、患者の退院後の生活の質を検討するためにも、より患者・家族に適応した改修をするためにも、リハスタッフの専門的意見が重要になってくると思われる。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top